透析患者さんの足病変の予防と治療 (part.1)「むくみ」、「しびれ」、「歩くと足が痛む」、「冷え」について

皆さんは「足の病気」と聞くとどんな病気を思い浮かべますか。 「水虫」でしょうか、「冷え性」でしょうか。もしかして「壊疽(えそ)」でしょうか。「むくみ(浮腫)」もあります。家具で足をぶつけた、転んで怪我をした、などのように「足の傷」を思い浮かべる人も多いでしょう。「足が良くつる」、「しびれる」方もいますよね。そうなのです「足の病気」とひとことで言っても、ものすごくいろいろな病気の種類があり、軽症から重症までさまざまなのです。

心臓や脳などの臓器は、命に直結するからと気にかけている方が多いでしょう。ところが「足」となるとどうでしょう?日頃から毎日歩いて動き・使っているご自身の足なのにも関わらず、気にかけたり、いたわったりしていないのではないですか? 足が悪くなってしまうと、週に3回、透析通院するのもつらいものとなってしまいます。

今回は透析患者さんに起こりやすい足のさまざまな症状を取り上げてみます。このような症状は足が「助けて〜」と悲鳴を上げている危険信号なのです。症状の裏側には重大な病気が潜んでいる可能性があります。危険信号は早く察することが大切です。次にこれらの症状の原因や対処法などについてお話したいと思います。

 

a) 足の症状について

 

1)むくみ(浮腫)

透析患者さんの多くの方が経験されているのではないでしょうか?むくみの原因は実に多岐にわたります。一番多いのは水分摂取過多でしょう。取り過ぎてしまった水分は一回の透析では除水しきれません。そのため四肢がむくみます。しっかり指示された除水制限を守ることが大切です。それ以外では、運動不足による浮腫もあります。ふくらはぎのポンプ機能が働かず、心臓に戻しきれないためにむくんだままになります。運動制限を指示されている方は別ですが、なるべく良く歩くこと、就寝時は軽く下肢を挙上して寝る、入浴時に下肢を良くマッサージするのが効果的です。

心臓や甲状腺が悪い場合やリンパの病気などでもむくむことが多いです。また、栄養不良(低アルブミン血症)や塩分の摂取し過ぎでもむくみことがありますので、食事療法も大変重要となります。

 

2)しびれ

特に高齢者には多い症状の一つです。良く転ぶ、骨粗鬆症も患っている場合は圧迫骨折を起こし、しびれの原因になることもあります。脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどの整形外科的な病気が代表的な疾患です。

近年、透析導入の原因となる疾患は糖尿病性腎症が増加していますので、糖尿病が原因の透析導入の方も多いでしょう。糖尿病は進行すると末梢神経が障害され、下肢・足底に違和感、しびれを自覚するようになります。糖尿病神経障害に対する薬の進歩も目覚ましいものがありますので、我慢せずに担当医に相談されてみてはどうでしょう。

 

3)歩くと足が痛む

前述の脊柱管狭窄症が原因のことも多いのですが、動脈硬化で動脈が狭窄してしまい、足の血流が悪くなることが原因となることも多い症状です。透析患者さんはリンとカルシウム代謝の異常によって動脈硬化が起こりやすいことがすでに分かっていますが、まだまだ解決された問題ではありません。

動脈硬化が起こりやすい部位としては、心臓と頭頸部以外の動脈では下肢の動脈が上げられます。下肢の血管に動脈硬化が起こると、足が冷たく感じたり、しびれ、痛みを感じたりします。この病気を閉塞性動脈硬化症といいます。初期症状は無症状なことも多く、進展するにしたがって、歩いているとふくらはぎやおしりの筋肉にこわばりを感じたり、痛くなります。少し休むと痛みはなくなりますが、症状が悪化してくると、ちょっと歩いただけでも痛くなり、歩くことが困難になってきます。病状が進行すると、じっとしていても手足が痛み、寝られなくなってしまうというような症状が起こります。心臓病で言うと狭心症に相当します。さらに病状が進行すると、壊疽へと進展していきます。壊疽とは、傷などに細菌が感染することで、そこが化膿し細胞が死んで腐ってしまう状態です。心臓病で言うと心筋梗塞に相当するため、足梗塞と呼んでいます。

閉塞性動脈硬化症は糖尿病を合併していると重症化し易く、病状が徐々に悪化するより急激に悪化することがしばしばあります。壊疽が悪化すると、下肢を切断しなければならなくなることもあるので、十分に注意が必要です。

治療について詳細な説明は省きますが、血流を改善させる抗血小板剤の内服やカテーテルによる血管内治療、外科的治療であるバイパス術があります。超音波検査、血管年齢の測定で早期発見することができますので、定期的に検査を受けることをお勧めします(引用1)。

 

4)冷え

上記で説明した閉塞性動脈硬化症でも下肢の冷えを自覚することがありますが、動脈硬化で動脈が狭窄していなくても、皮膚の血の循環が悪くなり、冷え性を起こす事があります。冬期は血管が収縮して冷えが悪化することがあり、温めるのが望ましいですが、糖尿病の患者さんは神経障害が進んでいるため、あんかや使い捨てカイロを貼りっぱなしにして低温やけどを起こすことがあるので特に注意が必要です。スキンケアや漢方治療で軽快することもあります。

今回のお話しは透析患者さんだけに特有な症状ではなく、健康な方についてもお役に立つ内容でしょう。次回、part.2では「つり」や「だるさ」などについてお話ししたいと思います。

 

<引用>

1)竹内一馬 糖尿病大血管症ってどういうもの?

糖尿病ケア:2013年 第10巻4号 56-63 メディカ出版

2)竹内一馬  糖尿病患者さんにフットケアが必要なわけ

糖尿病ケア:2015年 第12巻3号 P13-16メディカ出版

3)竹内一馬 腎不全を生きる 2016年 Vol.54, 14-17