フットケア:足のトラブル「冷え性の治療」漢方治療 / 当帰四逆加呉茱萸生姜湯について

福岡はだいぶ桜も散ってしまい春の花が咲き始めましたが、まだまだ寒い日も多いです。「寒い時期に多い足のトラブル」の一つに「冷え性」があります。今日は少し「冷え性」の漢方治療についてお話をしようと思います。

フットケア外来を訪れる患者さんが訴える愁訴は多岐にわたり、自覚症状として下肢の冷感、しびれ感、痛み、違和感などを伴うことも多いです。

 

那珂川病院に勤務していた時に発表した2017年の臨床研究論文も含めて少し紹介いたします。足病変の診療では漢方治療の出番も多く、よく処方する機会があります。その中でも「当帰四逆加呉茱萸生姜湯:とうきしぎゃくかごしゅしょうきょうとう(38番)」は多用する漢方薬です。冷え性、凍瘡に対して効能効果を持ち、種々の疾患に伴う冷えやしびれなどに対する有用性が多数報告されています。

 

即効性はありませんが、「冷え」を治療することでしびれや痛みが軽減することもあります。当帰四逆加呉茱萸生姜湯以外の薬では、加味逍遙散:更年期障害、冷え性、不眠症、自律神経失調症、当帰芍薬散:体の疲れ、冷え性、むくみ、頭痛、肩こり、更年期障害、五苓散:はき気や嘔吐、下痢、むくみ(浮腫)、めまい、桂皮茯苓丸:生理不順、頭痛、めまい、肩こり、のぼせ、更年期障害、補中益気湯:食欲不振、全身衰弱、と言った漢方の出番も多いです。

 

いずれにせよ、論文の表にあるように4週間では効果は乏しくても8-12週間ほど継続して服用すると、ゆっくりと症状緩和してくることが期待されます。漢方は服用する人の相性も大事ですので、まず4週間は服用できるか、相性は良いかを確認し、その後に相性が良ければ継続してもらいます。どうしても喉元が通らない、気分不良になるなどの症状があれば、他の漢方薬に変更して病状を確認していきます。全ての患者さんに効果があるわけではありませんが、相性が合えば、今まで困っていた症状はかなり緩和することができ、喜ばれています。

当院には季節を問わず、年間を通して下肢の冷感やしびれの症状を訴える患者さんが多く来院されています。このような患者さんの訴える症状は多くは難治性であり、既存の治療だけでは対応しきれないことが多いのが現状です。

 

その中には心臓の血管で例えるなら「心筋梗塞・狭心症」と言った動脈硬化や血栓で動脈が詰まってしまったり、狭くなって足の血流が悪くなってしまう「閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)」、「急性動脈閉塞症(きゅうせいどうみゃくこうかしょう)」という重篤な疾患や前兆が潜んでいる可能性もあります。

冷えやしびれの自覚症状がある場合は、まず、痛みもなく検査できる「血管年齢」を調べることができる「ABI検査」や「下肢血管エコー検査」がとても有用です。これらの検査は針を刺したり、造影剤を点滴したりなどの体に侵襲や痛みを与える検査ではありませんので、気軽に実施することができます。特に50歳を超えた方、喫煙習慣のある方、動脈硬化の既往がある方、糖尿病・高血圧・脂質異常症(高コレステロール血症など)、透析状態の患者さん、閉経された方だけでなく、下肢の違和感、冷え、しびれ、むくみなどの症状がある方にはぜひ、受けていただければと思います。

 

この検査で異常が認められれば、血管を詰まりにくくするような「抗血小板剤や血管拡張薬」が必要になったり、重度であれば血管カテーテル検査が必要になることもあります。幸い、これらの検査が正常であれば、自覚症状によっては、「漢方薬」、「西洋薬」、「外用薬」などを単独、もしくは併用した治療を開始していくこととなります。

 

今年は例年と比較して「暖冬」であったことから「冷え」の症状が楽だったという患者さんも多いですが、寒い時期が終わってからも、同様の症状でお困りの患者さんはぜひ、ご相談ください。

 

論文の詳細はこちらをご覧ください。

https://www.philkampo.com/pdf/phil67/phil67-07.pdf

フットケア外来患者の下肢の不定愁訴に 対する当帰四逆加呉茱萸生姜湯の効果