「下肢のむくみ(浮腫)について」:むくみを軽視してはいけません

クリニックブログでの報告が遅れましたが、西日本新聞社のファンファン福岡(2019.7.19日号)にて「下肢のむくみについて」取り上げていただきました。

 

 

むくみの原因はなんですか?

むくみの原因は実に多岐にわたります。運動不足、甲状腺やリンパの病気でもむくむことが多いです。栄養不良や塩分の摂取し過ぎ、扁平足や外反母趾、糖尿病が原因でも起こります。むくみは局所の病気ではなく、全身疾患が潜んでいる場合もあります。決して「歳のせい」だけではありませんので注意が必要です。「足と心臓・血管」をしっかり調べてみましょう。

 

むくみの対処法・治療法はなんでしょうか?

運動制限を指示されている方は別ですが、良く歩くこと、就寝時は軽く下肢を挙上して寝る、入浴時に下肢を良くマッサージするなどが効果的です。原因は多岐に渡りますので、治療法も病状によって異なります。専門的な検査をしっかり受けてから、病状に応じた治療を選択することが重要です。お気軽にご相談ください。

 

このようなことを新聞に掲載いただきましたが、9月7日に開催される「日本フットケア学会 富士山セミナー」にて院長の竹内がシンポジウム「私のむくみケア」にて「クリニックでのむくみ診察のコツ」

を講演いたします。 学会の抄録(プログラムに記載されるあらすじ)を一般の方にわかりやすく書き下ろします。https://convention.jtbcom.co.jp/footcare2019/program/index.html

実際の病院やクリニックの診療において足のむくみは「良くある病気(common disease)」ですが、下肢の血流障害よりも診察・診断が難しい症状の一つではないかと思います。当院にて行なっているむくみの診察について、実際の症例なども提示しながら紹介します。

むくみの原因は実に多岐にわたります。まず悪くなる(重篤化する)前に早期に発見しておきたいのは心臓が原因(心原性)、腎臓が原因(腎性)のむくみです。片足だけのむくみ(片側性)ではなく、両足ともむくむ(両側性の)場合に疑います。腎臓が原因の場合は血液検査にて腎機能の指標であるクレアチニン、尿素窒素(BUN)の項目を尿検査にてタンパクが混ざっていないか(尿蛋白)、血液が混じっていないか(潜血)を測定します。血糖値が高く糖尿病が疑わしい時には糖尿病性浮腫の可能性があります。貧血、栄養状態が悪い場合(低栄養)、肝機能障害でもむくみを認めるため、一般的な血液検査、甲状腺機能(ホルモンの測定)などを調べる必要があります。

心臓が悪い可能性が疑われる場合は聴診、心電図、胸部エックス線撮影にて心拡大、肺に水が溜まっていないか(肺うっ血)を評価、さらなる検査としては心臓エコー検査にて心機能(心臓のポンプの役割としての力強さや弁の逆流の有無など)の評価を行います。

下肢に血管のこぶ(表在静脈瘤)を認める場合は、下肢静脈瘤の存在を疑い、静脈炎・皮膚色素沈着・皮膚潰瘍の有無を評価、更なる検査は静脈エコー検査にて静脈の弁が悪いかどうか、血管内に血栓があるかどうか、ふくらはぎ・太ももの太さ(下腿・大腿周囲計)の左右差、などを評価します。リンパ浮腫の鑑別も必要です。

これらの疾患を除外しながら運動習慣や手術歴も過去の病歴を聴取します。降圧剤の一つのジャンルであるカルシウム拮抗剤が原因の浮腫も稀ではありません。運動習慣がない場合や長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしでも浮腫を生じます。

高齢者や生活の質が低下している患者さんでは、ふくらはぎの(腓腹筋)筋力低下による浮腫も多く、運動・ストレッチ指導が効果的です。運動制限を指示されている人以外は、なるべく歩くこと、つま先立ち運動、就寝時の下肢挙上、入浴時のふくらはぎの(腓腹筋)マッサージが効果的です。

脳卒中などの後遺症で麻痺がある場合は麻痺側の浮腫、特に高齢者では足に菌が侵入して感染を起こす蜂巣炎も多く、予防のためには乾燥肌(乾皮症や皮脂欠乏)に対してのスキンケアが重要になります。

むくみは多くの患者さん、特に高齢者や女性に多く見られる病状です。軽症なこともありますが、実際は重篤な病気の「危険信号」として「むくんでいる」ことも多く、軽視してはいけない病状です。 また、学会報告も含め、ブログでご紹介したいと思います。

上記の症状でお困りの方は、是非、「六本松 足と心臓血管クリニック」にお気軽にご相談ください。