厚い爪(肥厚爪)・爪甲鉤彎爪(カタツムリのような爪)のケア 〜研磨用のグラインダーが増えました〜

あっという間に2月も下旬です。少しずつ暖かくなってきて日曜日は春を感じる気温ですね。

糖尿病の人口は増えています。糖尿病は血糖値のコントロールだけが重要な治療ではありません。「しめじ」と言われる3大合併症が「し(神経障害)、め(眼:網膜症)、じ(腎障害)」はご存知でしょうか? それだけではなく当院で受診の多い合併症に「糖尿病壊疽(えそ)」があります。

 

糖尿病だけでなく、血液透析・閉塞性動脈硬化症(動脈硬化などにより下肢の血流が低下している状態)・高齢者・喫煙者・リウマチなどの膠原病・栄養状態の悪い方などの「足病変ハイリスク」患者さんは、たこ、魚の目、靴擦れ、やけど、外傷、巻き爪などがきっかけで「難治性潰瘍」、「壊疽(えそ)」へと容易に進展してしまいます。

 

しかし、それらの多くは定期的な受診による診察・処置・ケアで予防可能であることが報告されています。これらのことは医療従事者にもまだまだ知られていないことも多いのが現状です。

 

糖尿病患者さんに限ったことではありませんが、足の病変で多いのが「たこ(胼胝)・巻き爪・厚い爪(肥厚爪)」です。写真のような病変は患者さん自身、ご家族、ご家庭、施設内ではケア、処置できずに困っている方も多いと思います。

 

当院では専用の研磨機器であるグラインダーマシーンを使って処置・ケアを実施しています。研磨した粉塵を吸引できるグラインダーはフットケアに特化したマシーンであり、室内環境にも優しく、新型コロナ対策にもなっています。

元来、院内にはこの特別な吸引器付きグラインダーマシーンを2台、ポータブル(移動式)グラインダーマシーン1台(もう1台予備あり)を備えて稼働し診療、ケアに当たっています。

 

全国的にも病院、クリニックでグラインダーマシーンを2台以上備えているところは限りなく少ないのではないでしょうか。当院ではなんと3台目を導入してしまいました。国内唯一??かもしれませんね。

爪やタコの性状に合わせて写真のように様々な形状のアタッチメント(先端に装着する器具)に付け替えてケアを行います。これまで以上に環境にも優しく、かつコロナ対策にも役立ちながら、患者さんに質の高いケアができればと願います。

少し詳しく解説します。 竹内が過去に執筆した「フットケアが必要な足はどんな足?

」(糖尿病ケア 2017年3月号 メディカ出版)から引用・改変。

 

  • 胼胝(べんち)

足や足趾の変形、靴による圧迫、摩擦などの機械的刺激が原因となって、角質が増殖してしまった状態が胼胝です。糖尿病患者さんの場合は胼胝下に膿瘍形成していることがあるため、注意深く観察しましょう。このグラインダーで研磨ケアすることができます。スピール膏などのタコ取りは危険な場合も多いのでお勧めはしません。糖尿病、透析などの足病変ハイリスクの患者さんは禁忌です。

 

 

 

  • 疣贅(ゆうぜい)

いわゆるウイルス性のイボのことを言います。足底部にできることが多いのが特徴です。水痘などと比較して感染力は弱いですが、胼胝と間違えて削ってしまうと悪化することもあり注意が必要です。治癒には時間を要します。自己判断でのセルフケアは悪化の恐れがあります。

 

  • 角化・亀裂・乾燥

糖尿病患者さんでは自律神経障害からの発汗減少によって皮膚乾燥が著明となり、このような皮膚トラブルが発症しやすくなっています。神経障害からも自覚症状に乏しいことも多く、スキンケアの指導が重要です。角化はグラインダーである程度研磨してからの外用剤塗布が有用です。

 

  • 巻き爪・陥入爪

巻き爪は形態学的に爪が巻いている状態を言い、陥入爪は爪甲が趾に食い込んで炎症を起こした状態を言います。糖尿病患者さんでは下肢切断の初発原因となり得ます。筆者は保険適応外ですが、可能であれば低侵襲なワイヤーによる巻き爪矯正治療:3TO法による治療を勧めています。

 

  • 爪白癬

白癬菌が爪甲に侵入し発症します。見た目では診断できないため、確定診断のため検鏡が必要です。当院にて迅速検査が可能ですのでご相談ください。以前は内服治療が主体でしたが、近年では外用剤も発売され、効果を発揮しています。爪は肥厚したりもろくなったりすることが多いため、ケアは慎重に行う必要があります。肥厚が強い場合はグラインダーで研磨してからの外用剤塗布が有用なこともあります。

 

  • 肥厚爪・爪甲鉤弯症

高齢者の爪病変の中で多くの割合を占めています。爪白癬との鑑別が必要です。靴で圧迫されそうな場合や隣接する足趾を傷つけそうな場合などはヤスリやグラインダーを用いて研磨して、ある程度まで薄くしておくのが望ましいでしょう。

 

 

 

  • うっ滞性皮膚炎

下肢静脈瘤を長く放置している症例、深部静脈血栓症遺残などが原因となる症例が多い。治療の第一選択は就寝時の下肢挙上などの生活指導、弾性ストッキングもしくは弾性包帯による圧迫療法です。外科的治療適応となることもあるため、専門医への受診を勧めましょう。

 

  • 浮腫

原因は多岐にわたるため鑑別診断が重要です。心原性、腎性、リンパ性、静脈うっ滞性、内分泌性、薬剤性などが原因となり得ます。栄養不良や塩分、水分の摂取し過ぎなどでも起こるため、患者さんの生活背景の把握も重要となります。

 

今回のブログはこの辺で。明後日からは3月になります。まだまだ、標準的感染対策は必要ですが、春の陽気も見えてきました。皆さん、足もとからの健康を維持して、心肺機能を高めるように心がけてくださいね。当院では気軽にそのようなご相談にも乗れればと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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