炎症性肉芽を伴う陥入爪の治療について

2019.2/9-2/10で第17回日本フットケア学会が開催されました。


是枝哲先生(これえだ皮フ科医院 皮膚科)、高山かおる先生(済生会川口総合病院 皮膚科)の座長のもとシンポジウム「炎症性肉芽を伴う陥入爪の治療について」にて発表する機会を頂きました。
桑原靖先生(足のクリニック表参道 形成外科)、塩之谷香先生(塩之谷整形外科 整形外科)、立花隆夫先生(大阪赤十字病院 皮膚科)とご一緒させていただき有意義なシンポジウムとなりました。
何だかテレビ出演の多いスターの先生方に加えていただきありがたいですね。さすがの超満員の聴講者でした。

 

先生方の発表は勉強になりましたが、特に足病変ハイリスク患者さん(糖尿病、下肢の血流が低下した(閉塞性動脈硬化症)方、透析、膠原病、栄養状態不良、喫煙、高齢者など)においての施行は、侵襲的な治療法の選択によっては、手術した創が治らず、壊疽への進展する危険性が高いとも感じますので、注意が必要です。前述の足病変ハイリスク患者さんの場合は、侵襲的な(組織を傷つける)治療すなわち手術をしてしまうと、手術によってできた創が治らないだけでなく、侵襲を加えたことでさらに創が悪化して壊疽に進展してしまうことがあります。決して全例がそうなる訳ではありません。あくまで結果論ではありますが、分かっているのであれば、なるべくそういった結果は避けたいものです。

手術を受ける際には担当の先生はそういった最悪のお話は必ずされるとは思いますが、起こってしまってからでは遅いのです。そういった患者さんには、即効性は期待できなくても、低侵襲な治療が安心かつ安全だと考えています。ワイヤーによる巻き爪矯正治療法は国内では保険適応はありませんが、そのような場合にも効果を発揮します。

私は「陥入爪における3TO法(ワイヤーによる巻き爪矯正治療法)の治療戦略」の発表でした。

(学会抄録から一部改変)

足病変ハイリスクの患者において陥入爪は下肢切断の初発原因となることから軽視してはいけない病変であることは周知のとおりである。さらには、炎症性肉芽を伴うような陥入爪の治療にはしばしば難渋させられる。

筆者の基本的治療方針を提示します。炎症性肉芽を形成している症例については、爪棘が存在していることも多く、洗浄指導後にまずはコットンパッキングから開始するのが通常です。次に炎症性肉芽の大きさにもよりますが、硝酸銀を塗布しながら爪棘や爪縁のアセスメントを行います。

難治化している症例では部分抜爪術を併用しておこなう事もありますが、あくまで最終手段であって欲しいと願っています。当院では、陥入爪に対して(巻き爪の併発症例は別)、ファーストチョイス(第一選択)で3TO法(ワイヤーによる爪矯正治療)を施行することはほとんどありません。まずは炎症性肉芽を落ち着かせてから、機械的刺激の原因となっている爪甲を一部切除して、そののちに深爪になった状態に対して巻き爪を発症するのを防ぐために実施していることが多いです。

 

陥入爪を治療されている先生やこれから治療を学ばれる先生方の一助になればと願います。もちろん、患者さんやご家族にも知ってもらいたい内容です。