箱根駅伝でも話題の厚底シューズについて 〜履いたら誰でも早くなるのか? 長所と欠点は何?? 足トラブルは出ないのか?〜
以前のクリニックブログでは「足のトラブルを防ぐ 適切なシューズ選び」について書いた事がありました。今回は箱根駅伝2020でも話題の厚底シューズについて少し書いてみたいと思います。あのアディダススクールと言われていた青山学院ですらほとんどのランナーが着用していましたね。
ご存知のように私自身もランニングをしていますので、研究?自己満足?勉強?のため、年末にこの話題のシューズを買ってみました(笑)。このシューズの購入により、我が家のランニングシューズ箱にバリエーションが増えました。
さて、以前のブログからの引用ですが「適切なシューズ選び」とはどんなシューズでしょう? つっかけやバスケットボールシューズでのランニングは論外ですが、「経験や走力に見合ったシューズ」、「サイズが適切なシューズ」を選ぶ事が重要です。
モチベーションアップのためにも、ついつい「格好いい」、「可愛い」デザインだけで選んで買ってしまいがちではありますが気をつけたいところです。
目標のタイムを出すだけでなく、完走を目指すには「適切なシューズ選び」がとても重要になります。「適切なシューズ選び」をおろそかにすると「完走」できないだけでなく、「怪我」をも引き起こしてしまいます。ですから、楽しく安全なランニングには是非「自分に合ったシューズ」を早めに見つけておいて欲しいと思います。
「適切なシューズ選び」とは「自分の足に合っているシューズ」を選ぶのは大前提ですが、「シューズの機能」と「自分の走力・トレーニングレベル」とのバランスも重要になります。
「軽いほど良い・楽」と思いがちではありますが、「軽い」ということはクッション性や足を守る固定性(ホールド性)、耐久性などの機能を犠牲にしていることが多いです。「軽い」と「多機能」は相反する事なのです。
従来のアスリート向けシューズは、クッション性を犠牲にすることで軽量化を図ってきたのです(もちろん、そんな簡単なことだけではありませんが、詳細までは割愛します)。またソールを薄くする事でより地面からの反発をダイレクトに足に受け取れるとも考えられていました。話題の「ナイキの厚底シューズ」は、そのような通説を大きく覆しました。
独自素材の開発により、クッション性を良くした厚いソールにも関わらず、軽量化に成功しました。また、それだけでなく、軽量なのにも関わらず、カーボンプレートを内蔵した事で、地面からの反発力をまでも味方につけられるような構造を開発しました。
そのことから、「ドーピングシューズ」、「魔法のシューズ」とまで言われ話題となっています。そして発売からその魔法のようなシューズを着用して、自己タイムを縮め、夢を実現させたアスリートが多く出現するようになってきました。
今回の箱根駅伝2020の記録や多くのランナーが自ら選択し着用して走っていることことやその他のエピソードからもこのシューズは凄いのだということが実証されました。
では、このシューズはどんな人でも履けば早く走れるようになる「魔法のシューズ」なのでしょうか?? 短所は無いのでしょうか?
「ランニング・ウォーキングシューズ」であっても機能や走力(初心者、中級者、上級者、アスリートなどなど)、歩く・走る目的別(ウォーキング用、室内トレーニング用、ロードのランニング用、トレイルランニング用・山登り用など)によって靴底(アウトソール)やアッパーの形状、クッション性や重さ、耐久性も様々ですし、各メーカーによっても素材やコンセプト、そして価格も大きく違います。ですので、用途やトレーニングの状況、ご自身の足のコンディションによって履き分けできるようになるのが理想的なのです。
しかし、皆さんがすべての知識を知るのは無理がありますので、ご自身だけで選ぶのではなく、シューズショップのベテラン店員さんに相談してみて下さい。最近では知識と経験が豊富な「シューフィッター」資格を持った店員さんも増えてきています。
これらのことからも「魔法のシューズ」と言われている「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% https://www.nike.com/jp/t/ナイキ-ズームx-ヴェイパーフライ-ネクスト%-ランニングシューズ-Nv2mBJ/AO4568-600 」であっても、万能では無いことも知っておくと良いでしょう。「シューズは間違った履き方をすると凶器にもなるのです」。
話題になっているから、流行りだから、格好良くファッショナブルだから、と言った理由で購入することはお勧めできませんし、トラブルを招く一因となります。
https://www.nike.com/jp/t/ナイキ-ズームx-ヴェイパーフライ-ネクスト%-ランニングシューズ-Nv2mBJ/AO4568-600
「魔法のシューズ」のもう一つの機能は「ランナーが走らされる構造」です。つま先側に傾斜が通常のシューズよりも強めについているのです。分かり易く言えば、傾斜が急な下り坂を歩いていても途中から早歩きになってしまうことをイメージしてみて下さい。そのような状態で、トレーニングができてない身体で「走らされてしまう」と、当然トレーニングできてない身体が悲鳴をあげてしまうのは容易に想像できるでしょう。
初心者ランナーがそのようなシューズを履くと、筋力や走り方がまだ備わっていない状態のため、マラソン中、マラソン後、トレーニング中に、「靴ズレ」、「筋肉痛:ふくらはぎ、大腿部、股関節など」、「爪・足趾の痛み」、「膝の痛み」、「足関節の痛み」などの足トラブルが発生しやすくなってしまうのです。
「マラソン・ウォーキングは足元から」、「健康も足元から」、まずは足元をしっかり固めて、楽しい「マラソン・ウォーキングライフ」を過ごして欲しいと願います。
ちなみに僕は初めてナイキのシューズを購入し、アシックスは持ってはいるが苦手、「アディダス派」のなんちゃって市民ランナーです。 最近のハーフや時々フルマラソン大会では「アディゼロ タクミRen」を着用しています。
あくまで医学的な知識と浅いランニング経験からの私的な感想でした。また、機会を作ってこの「魔法のシューズ」についての使用感や、知識と経験が豊富な「シューフィッター」資格などについてもブログにアップしてきたいと思います。「足と靴の世界」って奥が深いと思いませんか?