「新型コロナ関連報告」〜足のしもやけ様の症状についての考察〜

福岡市内のコロナ感染者数は現時点で364名(福岡県では646名)(2020.5.2現在)とのことですが、全国的いや世界的にもまだまだ拡がりをみせています。

 

インターネットやSNSの拡がりからも我々は多くの情報を得られる便利な社会になりました。が、その一方で「情報過多」、「誤った・偏った情報(故意かどうかは別にして)からの偏見・不安の助長」などからの不安も増えました。特に高齢者に対しては優しくない世の中になってきたと感じます。

子供も大人も、そして自分自身も含めてなのですが「正しい情報の取捨選択」は気を付け、ご両親お子さんへ伝えるように心がけましょう。

 

当院は「足と心臓血管」の専門クリニックであり、高血圧、糖尿病、脂質異常症などを代表とする生活習慣病、心臓弁膜症、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、足の動脈硬化である閉塞性動脈硬化症(最近は末梢動脈疾患とも言います)、下肢静脈瘤、巻き爪・陥入爪などの爪疾患、外反母趾・扁平足・甲高(開帳足)・リウマチの足趾変形・変形性膝関節症などの足・脚の変形性疾患、糖尿病性潰瘍・糖尿病性壊疽・蜂窩織炎(蜂巣炎)などの足の感染性疾患、冷え性・しもやけ、などの患者さんを多く診ています。

 

最近は相変わらず新型コロナ感染症の話題も多い中、自粛が1ヶ月以上と長くなってきたこともあり直接の「新型コロナ感染症」以外の問題が生じてきています。

 

「コロナ後廃用症候群」(下肢筋力低下を始め、認知症・老年性うつの出現、子供の異常行動、障害者の精神的不安定化など)、生活習慣病の増悪などの「健康二次被害」がとても心配な事です。この辺は過去のブログでも記載していますので、過去ブログをご参照ください。

 

こんな時こそウォーキングで体力・免疫力を維持して欲しい。コロナ騒ぎで高齢者は寝たきりに?? 「正しく恐れて、本末転倒にならないようなコロナ対策:福岡市在住の高齢者対象」(2020.3.18クリニックのブログ)

https://ashitoshinzo.com/2020-3-18-1/

 

新型コロナウイルス騒動以外での怖いこと(2020.4.18クリニックのブログ)

https://ashitoshinzo.com/2020-4-19-1/

 

今回は、新型コロナ感染症で話題となっている「足のしもやけ様の症状について」考察を述べたいと思います。

 

最近、テレビなどのメディアで新型コロナ感染症の部分症状としての「足のしもやけ様の症状」が取り上げられました。新型コロナ感染症の解剖例や中国、ヨーロッパなどの入院患者さんのデータを元に貴重な論文が多く発表されるようになってきています。

 

全ては把握していませんし、多くご紹介することはできませんが、新型コロナ感染症の特徴として、「内皮細胞障害による易血栓性」、「血栓性炎症」が挙げられています。一般の読者の方には難しいかと思います。要するに「感染したことによって体内のあらゆる血管が詰まり易くなる」と言うことです。

 

最近では若い患者さん(40歳代)に脳梗塞を発症している事例も報告されています。これは頭部もしくは頸部の動脈に血栓ができてしまったことが予想されます。

 

写真のような「足のしもやけ様の症状」はいわゆる「足の動脈の末梢(細くなった先のほうの動脈)が血栓によって詰まってしまった」状態なのではないかと推測されます。(写真はめざましテレビの放送から引用) 既存で知られている類似の病態(似たような病状)としては「コレステロール塞栓症」が挙げられます。これは血栓ではなく、コレステロールの破片が足先に詰まってしまう病気です。

 

いずれにせよ血流が途絶えてしまうことで、「足先・足指・その周辺の皮膚の色調が悪くなってしまう」のです。その結果、一見「足のしもやけ様の症状」に見えるのです。報告によると感染初期ではなく、2-3週間後以降に出現し易いとのことですが、まだ詳細までは不明です。

 

あくまで私見ですが、「足のしもやけ様の症状」があるからと言って新型コロナ感染症かもしれないと不安がる心配はないでしょう。それよりも喫煙者は禁煙を頑張る、足の衛生状態が悪い方はしっかりシャワーや入浴で清潔に保つ。市販もしくは医療機関で処方を受ける保湿剤を用いて、しっかり足(脚)のスキンケアを行い「乾燥皮膚(ドライスキン)」にしておかないようにしてください。

 

「足のしもやけ様の症状」と思っていたら、実は動脈硬化が原因の「閉塞性動脈硬化症」かもしれません。不安な方はまず「血管年齢」や超音波(エコー)検査で動脈硬化の有無を調べることが良いでしょう。当院にて検査可能(エコー検査は予約が必要)ですので、お問い合わせください。

今回の症状は動脈が詰まる状態のお話をしましたが、静脈にも血栓ができるようです。これはいわゆる「エコノミー症候群」です。これもまた、超音波(エコー)検査が有用です。超音波(エコー)検査は放射線被曝もなく体には無侵襲で、血管の状態評価にとても有用なのです。

 

下記は御紹介した論文の学会が発表した要約です。読者には医療関係者もおられるかと思います。専門性が高い内容にはなっていますが、引用掲載しておきますので参考にされてください。

 

<第21回日本検査血液学会学術集会FBページから引用>

https://www.facebook.com/kanazawa2020kensaketsueki/

Dolhnikoff M, et al:
Pathological evidence of pulmonary thrombotic phenomena in severe COVID-19.
J Thromb Haemost. 2020 Apr 15. doi: 10.1111/jth.14844.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jth.14844

 

【重要論文です】
今回の紹介はN数が少ないためレター論文ですが、極めて重要な論文です。感染の問題があり低侵襲性剖検での評価です。
今後の治療戦略に大きな影響を与えるように思います。

 

<肺の病理>
1)滲出性/増殖性のびまん性の肺胞障害。
2)肺胞や小気道の上皮細胞の高度なウイルス性細胞変性、リンパ球浸潤は軽度。
3)肺細動脈の種々程度の微小フィブリン血栓!!(肺組織障害の有無に依存せず)。80%(8/10例)で見られた所見。
4)血管内皮細胞の腫脹。肺毛細血管中の巨核球。
5)微小フィブリン血栓は、腎糸球体や皮膚表皮血管にはほとんど見られなかった!!
6)肺胞出血の病巣はほとんどなかった!!
7)肺梗塞はなかった!!
8)二次性の細菌性肺炎が、60%(6/10例)で見られた。
9)経胸郭的に組織を採取しているため、肺大血管の評価はできていない。

 

以下は私見です。

血液凝固検査は、進行例ではサイトカインストームによる線溶亢進型DICになるようですが、肺においては血栓が多発しています。
しかし、肺以外の臓器には血栓がありません。特に腎臓はDICのターゲット臓器ですがが、血栓はありません。

「全身性」にはサイトカインストームによる線溶亢進型DICですが、「肺局所」では血栓多発という、複雑な病像のようです。

 

日々、ストレスが溜まりがちですが(筆者も含め)、少しでも不安を減らす一助となればと願います。健康を維持するためにも「正しく恐れて」みんなでコロナに立ち向かって行きましょう。