マゴット(ウジ虫)療法って知ってますか? 日本マゴットフォーラムのweb講演会を振り返って 多くの足を救うメンバーが集いました。

皆さん、マゴット療法ってご存知ですか?? 糖尿病による怖い合併症の一つである「糖尿病性壊疽(えそ)・潰瘍(かいよう)」の治療法の一つなのです。

開業してからやや疎遠にはなっていましたが、前病院の那珂川病院ではかなり多くの症例数を実施していました。正確な順位は分かりませんが、九州では1番? 2番? 西日本でも5番以内には入る症例数でした。学会でも多くの発表を行い、メディアにも今日感テレビ、KBCなどなどでも多数取り上げていただいたこともありました。現在でも自身の講演でも時々は登場しており、竹内の講演をお聞きになったことがある方はご存知でしょう。

その基礎となっている研究会「マゴット療法症例検討会」、現在は「日本マゴットフォーラム」が主催しています。研究会で多くのことを学んできましたし、多くの発表を行いました。今回はその研究会でお世話になった京都大学大学院 理学研究科 沼田英治教授の退官記念講演会がwebで開催され、竹内も世話人として参加しました。

全国の懐かしいマゴット療法を医療で行うドクターや医療系の研究者、ハエや蜂などの農学系の研究者、バイオ関係の商社スタッフなどなどが集いました。特に司会を務めていただいた、奈良県農業研究開発センター 研究開発部 西本登志所長や、マミ皮フ科クリニック 岡田匡 院長先生、ツカザキ病院 心臓血管外科 顧問 三井英也先生には大変お世話になりました。

会の詳細はともかく、今まで疎遠になっていたこともあるのか、一度もマゴットに関するブログを書いていなかったことに筆者はとても驚きました。このブログで今回は少しだけ(話し出すとかなり長くなりますので・・・汗)触れておきたいと思います。

 

「マゴット療法」は、ウジに壊死組織を食べさせて壊疽や治りにくい傷(難治性潰瘍)を治療する方法です。治療対象となる患者さんは、糖尿病性壊疽・難治性潰瘍・静脈うっ滞性潰瘍・褥瘡などです。ウジが腐った人間の組織を食べて、汚染し感染の及んだ組織をきれいにし、治癒を促してくれる事は古くから人々に認識されていました。

古くはオーストラリアの先住民やビルマの伝統医が数千年前からこの治療を行なっていた事が記録に記されています。治療は疼痛を伴わず、また副作用もきわめて少ないために、患者さんの負担もかなり少なくて済みます。

しかし、第二次世界大戦後、外科手術の発達、各種抗生物質の登場やそれに伴う感染症の減少等によって、本治療法は人々から急速に忘れ去られていきました。

1990年代になり、抗生物質の乱用により抗生物質抵抗性の感染性潰瘍が出現し、また以前に増して糖尿病、動脈硬化症、虚血等の潰瘍の原因となる疾患が増えしかも重症化する症例が増えてきました。

これに伴い難治性の潰瘍が増加したため、治療法の一つとして、本治療法が再び脚光を浴びるようになりました。

マゴット療法は、世界中の約2000施設で取り入れられている治療法であり、イギリスでは1995年から健康保険適応の治療として認可を受けています。安全基準にきびしいアメリカでも2004年にFDA(食品医療品局)が医療機材として許可しています。日本では未だに健康保険が効かない、自費診療でしか治療を受けられないのが現状です。

国内では、ツガサキ病院 心臓血管外科の三井秀也先生(前 岡山大学医学部 心臓血管外科)が治療を導入し、2005年4月からジャパンマゴットカンパニー(http://www.japan-maggot.com/index.html)という企業を立ち上げて、佐藤卓也社長と無菌ウジ虫の国内生産を開始しています。現在国内では、当院も含め約100施設で施行可能となってはきましたが、健康保険が適応していなこともあり、普及していませんでした。

これが国内の現状ですが、2011年1月に一般社団法人 ジャパンマゴット治療教育研究推進協会が発足しました。本協会のシステムを適応すると、患者さんの経済的な負担を軽減して治療を受けることが可能となりました。治療可能かどうかは、竹内にご相談ください。

 

世界中では、糖尿病のために約30秒に1肢の割合で足が失われており、最近では、約20秒に1肢に増加したと言われています。日本国内でも、1年間に約3000件以上の壊疽による足切断の手術が行われています。

この治療が全てではありませんが、他院で足切断を宣告された患者さんであっても、切断を回避しうる治療の選択肢のひとつとして九州在住の患者さんのニーズにこたえられるようにしたいと願っています。(2012.8.9 Vascular Streetから改変)

 

治療の詳細は下記のホームページをご参照ください。

日本マゴットフォーラムと名称を変更してマゴットセラピーおよびヒロズキンバエに関連する研究・教育・事業に関する普及推進に努めています。竹内も理事を務めています。

日本マゴットフォーラム https://www.maggotforum.com

 

多くの論文、発表、研究などの業績もあります。業績はこちらをご覧ください。

https://www.maggotforum.com/achivement

今回はこのくらいにして、また、今後もマゴット療法についてのブログも書きたいと思います。

 

 

 

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