透析患者さんの足病変の予防と治療( part2. )「つり」、「かゆみ」、「だるさ」、「足の外傷」について

新年早々、足と心臓血管のトラブルを抱える多くの患者さんに受診していただいています。

皆さんは「足の病気」と聞くとどんな病気を思い浮かべますか。 「水虫」でしょうか、「冷え性」でしょうか。もしかして「壊疽(えそ)」でしょうか。「むくみ(浮腫)」もあります。家具で足をぶつけた、転んで怪我をした、などのように「足の傷」を思い浮かべる人も多いでしょう。「足が良くつる」、「しびれる」方もいますよね。そうなのです「足の病気」とひとことで言っても、ものすごくいろいろな病気の種類があり、軽症から重症までさまざまなのです。

前回は「むくみ」、「しびれ」、「歩くと足が痛む」、「冷え」についてお話しいたしました。(https://ashitoshinzo.com/2018-11-20/)今回は「つり」、「かゆみ」、「だるさ」、「足の外傷」についてお話ししてみたいと思います。

 

  1. a) 足の症状について

 

  • つり

原因は分かっていない事も多いですが、運動不足もしくは運動し過ぎなどでも起こってきます。入浴時のストレッチや適度な運動は効果があります。また、病状によっては漢方治療が有効なこともあります。また、静脈の病気である下肢静脈瘤が原因となることもありますので、下腿の静脈が浮き出ていている方は、一度診てもらうことをお勧めします。その場合は弾性ストッキングを着用するだけで、つらなくなったりもします。

 

  • かゆみ

透析患者さんは皮膚が乾燥しやすいことが多く、日々のスキンケアが重要です。入浴後などにしっかり保湿剤で下肢をマッサージすることを勧めます。背中などにもかゆみが出る事も多く、入浴時にスポンジなどで身体を擦りすぎない、保湿成分入りの入浴剤を使用してみることも試してみてください。下肢は無意識にかきむしったりしてしまうことも多いため、手指の爪をケアしておくことも、皮膚を傷つけにくくするポイントです。最近ではかゆみに対する薬の開発も進んでいますので、担当医に相談されてみると良いでしょう。夜間のかゆみは不眠やイライラの原因にもなります。

 

  • だるさ

むくみが強い患者さんではだるさの症状が強いことがあります。前述のようにむくみの治療で軽減することも多いです。下肢静脈瘤がある方は特にですが、日常生活では座りっぱなし、立ちっぱなしに注意して、休憩時に足を数分間でも上げる時間を作る、就寝時は少し足を上げた状態にしておくこともよいでしょう。下肢の血流障害がある患者さんや傷がある患者さんでは注意が必要ですが、つりだけでなく、だるさにも弾性(着圧)ストッキングが有効です。

 

  1. b) 足の外傷について

最後に足の外傷についても少しお話しておきたいと思います。人間が活動する以上は怪我は付きものです。透析の患者さんは前述のように糖尿病の合併も多く、皮膚の血流低下などの理由から傷が治りにくい傾向があるため、予防できるにこしたことはありません。予防には直接皮膚を出さないような服装が好ましいでしょう。半ズボンや丈の短いスカートなどはぶつけた際には怪我をし易くなりますので注意が必要です。

きちんとした靴や室内履きを選ぶ事は大変重要です。糖尿病患者さんの大切断のきっかけは原因不明ないしは靴ずれが多いと言われています。糖尿病の中でも神経障害がある患者さんでは、痛みを自覚しないために発見が遅れやすいので特に注意が必要です。小さすぎる靴でも大きすぎる靴でも靴ずれの原因となるため、自分で勝手に靴を購入せず、しっかりした靴店で自分にあった靴を選んでもらうのが望ましいことです。また、室内でも裸足で歩かず靴下を着用し、スリッパを履くように心がけましょう。

足を守ることは、その患者さん自身の生命を守ることに直結していると思っています。最初のきっかけは小さい傷だったにも関わらず、あっという間に大切断をしなければならない状態にまで進展してしまうこともあるのです。「たかが足の傷」ではないのです。

 

今回は、足に多い症状を中心にお話させていただきました。「足の軽い症状や怪我くらいで相談しても無駄だろう」と思わずに、透析スタッフに気軽に相談していただきたいと思います。ご自身で通院しているクリニックでは手に負えなくても、きっと診てもらえる連携病院をご紹介していただけると思います。他の病気でもそうですが、早期発見・早期治療が重要です。ご自身そしてご家族の足が手遅れになる前に最良の治療が開始できることを願っています。

 

<引用>

1)竹内一馬 糖尿病大血管症ってどういうもの?

糖尿病ケア:2013年 第10巻4号 56-63 メディカ出版

2)竹内一馬  糖尿病患者さんにフットケアが必要なわけ

糖尿病ケア:2015年 第12巻3号 P13-16メディカ出版