博多CKD(慢性腎臓病)研究会にて当院スタッフ西村看護師が講演します。「足病変の予防とフットケア・セルフケア」

医療関係者向けの講演会にて当院の西村直美看護師が「足病変の予防とフットケア・セルフケア」についてお話しさせていただきます。病院・クリニックでの処置やケアだけでなく、セルフケアも重要です。当院には透析患者さんも大変多く受診されています。

「フットケア」はどんな方にも必要ですが、一般的に「足病変のハイリスク」と言われているのが「糖尿病、透析、下肢の血流障害(閉塞性動脈硬化症)、高齢者、男性、低栄養、喫煙者、膠原病やその他の類似疾患、過去の切断の既往など」が挙げられます。

透析の導入原因の第一位は糖尿病です。ですから、透析関係、糖尿病関係の医療従事者にはぜひ知っておいていただきたいことなのです。

「透析の患者さんや糖尿病患者さんにフットケアが必要なわけ」その答えは「足を守ることは、その患者さん自身の生命を守ることに直結しているから」ではないかと思っています。糖尿病の患者さんの足は糖尿病による自律神経障害、末梢神経障害、末梢血管障害が原因となって創を作りやすい状態になっています。また皮膚バリア機構の破綻からも感染症を起こしやすく、容易に壊疽へと進展してしまいます。最初のきっかけは小さい創だったにも関わらず、あっという間に大切断をしなければならない状態にまで進展してしまうこともあるのです。「たかが足のけが」ではないのです。糖尿病の合併症は網膜症、腎症、神経障害とありますが、糖尿病神経障害は糖尿病合併症の中でも最も早く出現する合併症です。神経障害を有する場合は痛みの自覚が乏しいことから、創ができた時にも気がつかないために、発見が遅れてしまい重篤化する傾向にあります。

糖尿病患者さんに限ったことではありませんが、足病外来や病院でのフットケアの主な目的は足病変の予防と早期発見です。壊疽に至ってしまった患者さんの先進的な治療も重要ですが、そうなる前に予防して早期発見、早期治療していくことも同時に重要であると考えます。さらには、ケア、治療を行うだけでなく、セルフケア能力が低下している糖尿病患者さんや高齢者に対しての指導も理解してもらえるような方法と手順で行っていかなければ再発し易くなってしまいます。そのためには寄り添う心のケア、そして生活にまで踏み込んだ患者さんへの理解が重要です。医師だけではそういったことの解決は困難であり、看護師さんの力が必須だと思っています。

残念ながら壊疽から切断となる患者さんの生命予後は不良であることが知られています。糖尿病の病状のみならず、同時に動脈硬化も進行していきます。血管合併症を早期に発見、治療し、血管を良好な状態に維持することは、新たな合併症の発症や進展予防に繋がります。血管合併症である動脈硬化は心臓、脳、下肢だけに起こるものではなく全身に起きているからこそ、全身を診なければならないということを医療者もしっかり理解しておくことも重要です。ぜひ、多くの医療従事者に聞いていただければと願います。

<引用> 竹内一馬:糖尿病ケア 2015 vol.12 no.3 P13-14